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農業支援プロジェクト in バッタンバン州、コンポンスプー州 2022年11月

今年は待望の3年ぶりとなるカンボジア渡航が実現し、2年間のブランクがある各プロジェクト地の視察およびモニタリングを行うことができました。

久しぶりにお会いする現地の皆さんも快く迎えてくださり、地域の現状やプロジェクトの進捗状況を実地に確認することができました。

2020年よりリモートでお願いしていたバッタンバン州の新事業“仏陀協同組合”プロジェクトは、現地トレーナーによる継続的な指導のおかげで何とか軌道に乗せることができ、確実に村の自立と発展に役立っていることを実感しました。


セービング・グループ(仏陀協同組合)の概要と運営の仕組み

2019年の洪水発生時にCEPより緊急支援を行ったひと家族あたり$50を1年後に返済、その資金を原資として開始。

各グループ内で運営委員会の役員を3名選出し、代表、書記、会計係などを決める。

各グループは集会を開き、定例会の周期(毎週または毎月1回)、ローンや預金額の上限、利子率、ローンの返済時期(月々または1年の一括返済)などのルールを決める。

借入れ希望者は目的や借入額、返済時期などを申請し、委員会内で審査の上決定し貸出しする。

ローンの枠とは別に、メンバー各自の状況に応じて毎月預金をし、1年周期が終わったところで各自の預金額に応じて分配される。

利子は委員会の運営費(10%)や役員手当(30%)、緊急時のための備蓄費(10%)に当て、残り50%は預金をしたメンバー各自の分配金に加算される。


プロジェクト実施状況

<バッタンバン州プレイプリエル村>

プログラム開始時32名→開始後に新たな参加希望者があり現在47名


2022年3月から始まった小規模融資は、一年ローンで2023年2月に全額返済予定、利子率1.5%

借入金の使途は、メンバーの75%が種もみや肥料、殺虫剤、耕作の費用として、20%は鶏や鴨の飼育などに、5%は建築現場派の出稼ぎ時の交通費や、コメやとうもろこしなど穀物の運搬費などに使った。

セービングは毎月の集会時に各人1,000〜25,000リエルを預金し、グループ全体で毎月150$、10ヶ月後の現在は残高1,500$となっている。

この積立金は1年後の2023年2月に満期となり、預けた金額に応じてメンバーに分配される。


















<バッタンバン州タグネン村>

グループ1〜3があり、参加人数は現在合計約144名

グループ1:67名うちローン35名、セービング36名(4名は後から参加)

1年ローン、利子率2.5%

グループ2:47名うちローン30名、セービング30名(1名は後から参加)

1年ローン、利子率1.5%

グループ3:30名うちローン12名、セービング12名 

1年ローン、利子率1.5%


グループ2、3は参加者の約80%が女性で非常に意欲的であり、モチベーションも高い。

ただ今年は一昨年に続き雨季の雨量が多く、洪水の被害にあったところもあるため、ここ数ヶ月は預金できていない状態。

借入金の使途は主に耕作用の種もみや肥料代とのことだが、米の不作が続くと来年2月の返済が滞ることが危惧される。


グループ1は代表委員の1人であるVon氏が主に取り仕切っており、資金の返済管理なども彼が把握していたが、9月に心臓発作で倒れ、引き継ぎ業務ができなくなったため未解決の問題がそのまま残されてしまった。

Von氏の甥が新しい委員になったが、メンバーの名前や住所を把握するだけでも大変な状況、加えてまだ最初の50$を返済していなかったり、タイへ出稼ぎに行ってしまった人がいたりと、問題が山積みの様子。

数ヶ月様子を見て、その時点で何の返答もないメンバーは自動的に退会させ今いるメンバーだけで新たに仕切り直す、ということで承認を得る。


















セービング・グループの利点、参加して良かったと思うこと(メンバーからの声)

・毎年少しずつお金を貯めて、そのお金を1年後に受け取れるのが良い。

(レクチャーではお金を使う時に優先順位を考えて、必要なものから支払っていく、無駄な出費を抑えてその分を貯蓄に回すという考え方や方法を教える)


・農業に必要な米の種もみや肥料、殺虫剤などの費用を無担保で借りることができるので良い。


・突発的に必要になる費用や病気、怪我、葬式などの非常時にもグループからお金を借りることができるので安心。


なおバッタンバン州2ヶ村の米銀行については、ここ数年自然災害やコロナの影響により、米の収量が落ちていることもあり、種もみの返済がうまくいっていないとのこと。

特にタグネン村では委員会役員の内2人が、病気や怪我のため管理が滞っている状態だそうで、セービング・グループとメンバーが重なる部分が多いため、米銀行を廃止してセービングに統合するという意見も出ましたが、度重なる気候変動の影響でこの先米不足の事態になることも考えられ、いざという時のためにたとえ収量が少なくなっても存続した方が良いとのことで、そのまま継続することになりました。

タグネン村については、働けなくなった2名の役員に代わり、新たな役員を早急に選出する必要があるということになりました。

プレイプリエル村では逆に、メンバーが増えたことでストックする米の量が増え、リーダーの家の中にある蔵では間に合わなくなっているとのこと。新しい米倉を作りたい、すでに土地は確保してあるが資材にかかる費用が捻出できない、ついては1,500$ほどを支援して欲しいとの要請を受けました。

新たな米倉については以前から話があり、やはりいずれ必要になるものと思われましたが、現段階ではセービングで備蓄した資金でも足りないとのこと、持ち帰って検討することになりました。



<コンポンスプー州トロッペアンウェイン村>

米銀行メンバー42名 収穫量約7,000kg

昨年はまずますの収穫量だったが、コロナの影響もあり種もみの返済状況は思わしくないとのこと。メンバーのうち2名が亡くなったそうで、その場合どのように対応したら良いか分からず、返済を要求することも憚られるとのこと。メンバー同士の意思疎通が上手くいっていないようでした。


<コンポンスプー州スヌール村>

米銀行メンバー102名 収穫量約10,000kg

こちらも米の収穫量自体はそれほど悪くなかったようですが、メンバーの高齢化が進み、管理が難しくなっているとのことでした。


そこで2カ村合同の提案として出されたのが、米銀行を廃止し新たに牛の飼育業を始めたいとのこと。各村で初め4頭ずつの牛を飼い、徐々に数を増やしていくという計画でした。

1頭の牛がだいたい750$くらいするそうで、4頭で3,000$、2カ村で合計6,000$かかるとのこと。

現在トロッペアンウェイン村には約250$、スヌール村には300$のストックがあるそうで、あとは備蓄してある米を売り、残りの額を援助して欲しいとのことでしたが、この先の気候変動なども考慮し、やはり米銀行は存続した方が良いとお話し、この提案は一旦預かって検討することにしました。


私からはバッタンバン州2カ村と同様のセービング・グループ(仏陀協同組合)設立を提案しましたが両村とも賛同を得られず、その理由は以前にも別のNGOが来てセービングの説明を受けたことがあるが、仕組みが複雑すぎて分からなかった、運営するのが難しそうだからとのこと。

後から聞いた話ですが、このセービング・グループのプログラムは、様々なNGOが独自の方法で展開しており、なかには手続きやルールが細かく決められたものもあり煩雑な印象を与えるようで、恐らくそのような話を聞いたのではなかろうかと思われます。

いずれにしても、コンポンスプー州2カ村でのセービング・グループ設立提案は実現しませんでした。


これら2カ村では仏陀の池4、5がとても良い状態で保たれ、年間を通じて地域の重要な水資源となっていること、また少しですが家の敷地内の家庭菜園で野菜が栽培されており、それなりの工夫はされているようでした。


















<プロジェクト総括と今後の展望>

米銀行については、プレイプリエル村を除いてあまりうまくいっていない様子。これはメンバーの高齢化や気候変動、コロナなど様々な要因があると思われますが、セービング・グループの整然とした運営規約や管理体制と比べると、当初からしっかりとした体制が整っていなかったこと、継続的に指導やモニタリングを行ってこなかったことも背景にあり、反省すべき点が多々あると感じました。

ただこれまでの長年にわたる運営で培われたメンバーの団結力や、今後頻繁に起こることが危惧される自然災害に際しては、村人の命の糧ともなる米だけに、やはりどんな形でも存続することが望ましいと思われるため、今後は委員会役員の刷新も含めて、できるだけ現状に即した規約の整備などをする必要があると思います。

また喫緊の課題としては、トロッペアンウェイン、スヌール両村から出された牛の飼育業の提案にどう対応するか、彼らの意見や要望を聞きながら折衷案を探りたいと思います。


セービング・グループについては、2023年2月に返済期限を迎えるにあたり、まずは返済が滞りなく行われるかどうかが最大のヤマ場と思われます。

トレーナーのトゥエン氏には、これまでのタグネン村での様々な問題のため当初の契約より何度も日程をオーバーして訪問いただいており申し訳ない限りですが、彼の多大な努力の甲斐あってようやく軌道に乗り始めた重要な分岐点であり、なんとか無事に返済がされ次の借入れ者にバトンを渡せるよう見守りたいと思います。

またトゥエン氏からは、ここで更にしっかりとプログラムを定着させるため、もう一年トレーナー契約を延長してはどうかとの提案があり、来年度も回数を減らし年に4回ほどの指導とモニタリングをお願いすることにしました。

あと1年をかけてじっくりプログラムを定着させ、村人が完全に自分たちでセービング・グループを運営・管理できる体制を整えていきたいと思います。


その後はセービングの資金を活用して、プレイプリエル村ですでに見られるように、米の耕作に関する費用だけでなく、養鶏や野菜栽培なの地場産業の立ち上げを支援するなど、今後ますます不安定化する稲作を補完できるようにし、地域の自立と発展に繋げられることを目指します。

またいつ起こるか分からない自然災害や緊急事態に備え資金をプールしておくことも、地域の安定を図る上で今後さらに重要になってくると考えます。

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