カンボジア・エンパワーメント・プロジェクト(CEP)2020 年度カンボジア農業支援(米銀行)プロジ ェクト報告

<プロジェクト経緯>

新型コロナウィルス感染の世界的拡大と渡航制限措置により今年のカンボジア渡航計画を断念し、現地 スタッフとのオンラインでのやり取りで今年の収穫状況など確認しようとしていた矢先、10 月上旬にタ イ~カンボジア国境地帯を中心とした記録的な大雨とそれに続く台風に見舞われ、シェムリアップ州及 びバッタンバン州に甚大な被害が出たとの情報が入ってきました。タイ側から大量の水が流れ込み、あ っという間に川が増水、家屋浸水や流失などにより 14 万人もの被災者が出たとのこと。 近年の気候変動の影響でカンボジアでは雨季の到来が遅く、後期にまとめて激しい雨が降るという傾向 が続いており、米の収穫も少なからず影響を受けていましたが、今年は台風と重なり特にひどい洪水に 見舞われ、収穫前の田補が壊滅的な被害を受けたとのことでした。

さっそく CEP メンバーの緊急会議で協議し、現地の被害状況の詳細と何が最も必要とされているかを調 査したところ、バッタンバン州プレイプリエル村では家屋浸水は免れたものの、ブッダの池1、2ともに 水が溢れ、周辺の田補がほとんど水没し、近郊の村との間を結ぶ道路も冠水し通行不能になったとのこ と。一方タグネン村では2度目の洪水で家屋が浸水、死者や怪我人は出なかったものの家屋と田補に甚 大な被害を受けたとのことでした。






さらに詳しい聞き取り調査の結果、米は 100%ダメになったのではなく、2~3割はかろうじて残った こと、またタグネン村では水が引いた後に短期収穫米を栽培できることも分かってきました。ただその 短期収穫米を作付けする種籾がなく、それを購入するための資金もない。 プレイプリエル村では治水の条件が悪く短期収穫米は栽培できないそうで、その代わり彼らは漁獲や近 郊のとうもろこし・キャッサバ農場などで雇われ農民として働き副収入が得られることも分かりました。 いずれにしても両村ともかなり厳しい状況であることには変わりない様子。 そこで再度メンバーで協議した結果、今回の非常事態に際し、また COVID-19 パンデミックの影響によ る経済的な打撃も鑑みて、両村の希望者に緊急支援として一家族あたり$50 を支給することにしました。


ただしこの資金を寄付として交付するなら、使ってしまえばそれで終わりでその先に続かないので、寄付ではなく貸し付けという形を取ることにしました。

村人たちは種籾や当座の生活資金として活用した後、米銀行の返済に合わせてこの資金を返済する、そ の後この資金を原資としてマイクロセービング方式の共済システムを立ち上げること、などを条件とし て希望者を募ることにしました。 ここで強力な協力者が出現、プロジェクト遂行が大きく前進することとなりました。 カンボジア現地 NGO、G I Z(German International Cooperation)のスタッフであり、シェムリアップ 州で農民やコミュニティ支援をしている Sida Phoeurk(シダ)さん、彼女は UNTAC の時代から国際 NGO に籍を置き、カンボジアの僻地で農民の職業訓練や雇用創出などに携わってきました。 現地を訪問できない私たちに代わって、シダさんが資金の支給とプロジェクトの立ち上げに協力してく れることになりました。 まずはシダさんが直接現地を訪問し、現場のさらに詳細な状況とニーズを調査するとともに、村人にマ イクロ・セービング(カンボジアではセービング・グループという呼称が一般的のよう)の説明をしてく れることになりました。

11 月7、8 日の 2 日間シダさんが両村を訪問し、それぞれの村でミーティングを行いました。 現地調査1・プレイプリエル村

村人は稲作の他に雨季には漁業、養鶏・養家鴨(アヒル)などを営んでいるが、飼育方法を学んだことが ない。一方彼らが運営する牛銀行は上手くいっており、メンバーも増え1~2頭の牛も売った。 米銀行はこの村に定着しており、ここ数年は日照りや洪水など自然条件に影響を受けているが、運営は 概ねうまくいっている。 今回の資金援助はメンバー全員32家族が希望し、返済後はセービング・グループにも参加の意向。

現地調査2・タグネン村 現在米銀行には 150 家族が参加しているが、昨年の収穫も悪かったため8家族は種籾が返済できていな い。彼らの多くは短期収穫米を栽培し、水が豊富にあるので市場向けの野菜栽培も行っている。 セービング・グループには 142 家族が参加希望だが、うち 20 家族は今回のミーティングに参加しなか ったため、リーダーが彼らの意向を再度確認する。 シダさんからはセービング・グループを始めるにあたり、村人にやり方を教え自分たちで管理・運営がで きるよう指導する、また運用後のモニタリングをする役目を担うトレーナーが必要であること、また両 村のメンバーに成功例を見せ、資金を活用した起業の仕方を学んでもらうため、スタディーツアーを実 施すること、などの提案がありました。 またこの時期カンボジアでは、新型コロナウィルスの感染が地方にも拡大しつつあり、衛生用品として マスクと消毒液の支給も併せて行いました。 3

<プロジェクト実施状況> ●プレイプリエル村 養鶏・養鴨について、隣村で養鶏の知識と技術を持っている村人を発見、彼にローカルトレーナーとして 指導してもらう契約を結ぶ。契約料は 30$程度、次回訪問時に依頼することを約束しました。

11 月 17 日、32 名のメンバー全員に一律50$を支給。メンバーの内 8 名は牛の飼育料として、22 名 は養鶏費に充てるとのこと。また洪水で残った米に虫が付いたとのことで、防虫剤を買いたいというメ ンバーが多くいました。 来年 3 月末が米銀行の返済時期となるため、それに合わせてセービング・グループは 2021 年 4 月から 開始することになりました。 シェムリアップへのスタディーツアーは、収穫終了後の来年 1 月に予定。参加者はこれからの村を担う 若者で、知識を身につけ他の村人に教えたり、起業する意欲のある人の中から選抜して参加してもらう ことになりました。

●タグネン村 12 月 5 日米銀行委員会の各グループ長とミーティングし、グループごとにまとめて資金を支給。合計 139 名のメンバーに一律50$を支給し、その際借用証書と共に以下のような条文を付記しました。

1)このセービング・グループはカンボジア・エンパワーメント・プロジェクト(CEP)によって投資・設立 される。 2)全ての運営と経営はメンバー全員によって選ばれた委員会によって行われる。

3)借受けをしたい人は誰でも、指定の書面にその目的と借入期間を明確にして申請し、委員会の審査を 受けること。

4)私たち(CEP)はこの事業で利益を得たり、返済を要求することはなく、これを有効に利用することでメ ンバー間に資金が循環し、コミュニティの利益となることを望んでいます。

5)家族で何か問題が起きた時、病気になった時、天災などで収穫物が失われた時などの非常時にこれを 役立ててください。

6)全てのメンバーは委員会とリーダーに協力し、運営がスムーズにいくようルールを守ること。

7)お互いに信頼し助け合いながらこのコミュニティの財産を守り、皆の生活が豊かに発展していくことを願っています。






資金はほとんど全員が短期収穫米の種もみを購入する予定とのこと、返済時期は 2021 年 5 月で、その 後 6 月からセービング・グループを開始することとなりました。

<プロジェクト総括と展望>

今年の活動は新型コロナ感染拡大の影響を受け、渡航もままならない状況でしたが、洪水被害による災 害支援をきっかけに思わぬところで進展し、結果的には昨年度の目標であったマイクロセービング方式 の共済組合設立に向けて、大きな一歩を踏み出すことができました。 今回のプロジェクト遂行に協力してくれたシダさんのおかげで、カンボジアには既にこの方式のセービ ング・グループというプロジェクトが各地で根付き成功していること、そのノウハウや運営の仕方を指 導するトレーナーもいることがわかり、これを利用すれば私たちが指導するよりも的確に、現場の実情 に合った仕組みができる、しかもプロジェクトの進行に応じて定期的にモニタリングもできるとのこと で、まさに災い転じての展開となりました。

来年 6 月のプロジェクト立ち上げにはできれば私たちも出席し、新しい共済組合の発足とコミュニティ の自立した発展への道筋を見守りたいと思います。

カンボジアにおける新型コロナウィルスの感染状況ですが、感染者数は世界的に見ると圧倒的に少ない 上罹患者の回復率も高く、検査数の少なさを差し引いてもそれほど深刻な状況ではないようです。 しかし政府の感染対策はかなり厳しく、州をまたいでの移動制限や全国学校閉鎖などの強行策をとって おり、国民生活への影響は決して小さくありません。 また海外企業の下請け工場が多いカンボジアでは、生産受注減少の影響で賃金低下や解雇が続き、失業 者が増加するなど経済的な打撃も大きいようです。 一旦解除された休校措置も、11 月に感染者が増加し再び学校が閉鎖され、再開の目処はまだ立っていま せん。また 10 月にカンボジアを襲った台風による洪水被害も東北地方を中心に広がっており、農村部の 貧困化が懸念されます。

そのような要因のためまだ予断を許さない状況ではありますが、この共済組合の基盤をしっかりとした ものにし、近年の気候変動の影響で今後も繰り返し起こり得るさまざまな災害にも、皆で協力して対処 し村の暮らしを守っていけるような体制を作っていきたいと思っています。






































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